Group Exhibition
“Draw Lines & Shapes in My Maps”
Feb. 28 - Apr. 06, 2024
T&Y Galleryではグループ展 、“Draw Lines & Shapes in My Maps” を開催いたします。 本展では、新進気鋭の若手アーティスト7名、山田康平、梅原義幸、杉田万智、須藤啓志、中田愛美里、宮林妃奈子、渡邊涼太の作品をご紹介致します。
現代社会に生きる中で、自分を含む多くの人が使用するものの中に「地図」がある。知らない土地に行く時、電車の乗り換えや行きたいお店を調べる時、様々な場面で使われているはずだ。また今日、地図のデジタル化は進み続け、小さな手元に収まるスマートフォンの中で全てが完結している。 その、誰もが見ている「地図」は、実は書き手に委ねられている。地図を見ていると現実の状態と重ね合わせてしまいがちだが、実際には都道府県の境界線を現実の空間で認識出来なかったりするように、現実を地図上に再構築しているものだ。また、地図は専門的な機関によって正確な測量データの上で作成されるものなので、そこに自由に個人が介入することができず、ある種権威的なものである。なので、縮尺や距離は正確だが、それだけでは表現できないものがある。そこで必要となるのが「マップ」であ る。「マップ」は、狭いエリアに限定して作られていることが多く、例えば観光マップやグルメマップといったものは書き手が勧めるお店などが太文字で書かれていたり、その写真が掲載されていたりと、デザ インも多様で自由な表現を採用している。
本展覧会タイトルは、Google マップに備わっている機能の一つである「マイマップ」の操作の中にある、「ラインとシェイプを描画する」という項目についてのGoogle help上の記述から引用を行った。「ラインとシェイプ」という二つの言葉は絵画や写真、彫刻といった美術作品ともかなり関係が深い言葉である。「地図」が現実を再構成して伝え、共有するためのメディア(地図は現実に奉仕している)であるのに対し、「マイマップ」はその個人の使い方に全て由来される。また、ラインとシェイプの二つを意識的に使うことによって、ある現実を強調したり誇張したり歪めたり隠したりすることができる。(またそこには、時間や、感情も内包できる)
本展では、2023年11月19日から12月28日の期間にタカ・イシイギャラリー前橋にて行われた展覧会を、 出展作家を入れ替えて再構成している。前橋での展覧会では、この「マイマップ」という概念を各々で持ち込むことによって、初めは点でしかなかった作家個人が、点と点が隣り合うことによって線となり、滑らかさや結びつきを獲得することができた。今回は、「前橋」という土地から「ロサンゼルス」という全く異なる土地に展示場所を移すことによって、新たなるリフレーミングの実践を目指していく。
山田康平
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山田康平
1997年大阪生まれ。2020年武蔵野美術大学油絵学科油絵専攻卒業、2022年京都芸術大学修士課程美術工 芸領域油画専攻修了。キャンバスと紙にたっぷりとオイルを染み込ませることから始まる山田の制作は、 起点や輪郭となる黒の線をひき、絵の左上には光に見立てている黄色をのせ、それから強く鮮やかな色で一気に画面を覆います。筆を重ねることでキャンバスの表面は更に滑らかに整えられ、面と面がぶつかる場所から浮かび上がる色は強さを増し、何層にも重ねられたレイヤーから山田作品特有の奥行きが絵画空間に生まれます。
梅原義幸
1997年群馬県生まれ。2020年 多摩美術大学美術学部絵画学科油画専攻卒業。「もの」と「私」の関係性 の中に、またはそれらの接触点にふと感じる顔/像をタブローに描き出しています。 FACEシリーズは物の存在と私という存在の間、接触点に存在するぼんやりと感じ取った顔を記録として描き出すことから始まりました。物に見つめられる感覚、物や空間から気配を感じ取ること、そしてそれらに触発され私が私に見せられている顔。 それは一体何故なのか。物と私に宿る魂のありかについて私は考えます。
杉田万智
2000年埼玉県生まれ。2020年女子美術大学短期大学部造形学科美術コース卒業、2022年同大学部研究生卒業(学士)。人間の創り出す「光」と「看板」、ネオンや街の光を固有のモチーフとしながら人権や民族、社会問題への言説や警鐘を込めた作品を制作する。
須藤啓志
1993年北海道生まれ。2015年 東京大学農学部卒業、2017年東京大学大学院 農学生命科学研究科森林科学専攻修了、現在東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻在籍中。日本庭園における”ししおどし"に共鳴するように、最小の視覚的関与により、新しく自然をみることに取り組んでいる。
中田愛美里
1997年東京生まれ。2021年東京藝術大学美術学部彫刻科卒業、2023年東京藝術大学大学院美術研究科彫刻専攻修了。プロのバレリーナを目指し舞台上で役を演じる経験をもとに、セラミック、CG/映像を用いた作品を制作している。日常生活から感じられる演劇的な要素を、バレエや演劇の演目、童話などをベー スとした物語に落とし込む。空洞なセラミックと役の入れ物としての空虚な人間たちを重ね合わせ、ひとの在り方を模索する。
宮林妃奈子
1997年北海道生まれ。2019年ベルリン芸術大学美術学部交換留学 (Mark Lammertに師事)、2021年多摩美術大学美術学部絵画学科油画専攻卒業、2023年ベルリン芸術大学美術学部修了マイスターシューラー取得 (Thilo Heinzmannに師事)、現在東京藝術大学大学院美術研究科絵画専攻在籍。オイルペインティングを中心に、コラージュなど様々なメディウムを使用しながら、一貫した世界観を表現しています。描く・描かれること、支持体や描画材、絵やそれらと自分自身との距離を、日課としているドローイングやペインティングを通して、必然的な関わり方を模索しています。
渡邊涼太
1998年埼玉県生まれ。2021年東北芸術工科大学芸術学部美術科卒業、23年東京藝術大学大学院第六研究室修了。 高画質化し薄く、速くなっていくこの波の流れに逆らいながら、「解像度を落とす編集」という再構成を行い、境界線がなくなってしまった感覚に境界を与え、浮遊する一人の人間として着地できる中道空間を探している。何者であるかを忘れてしまう前に、出来る限り痕を残しておこう。